5分でわかる年金数理人

年金数理人をご存知の方は、まだまだ少ないと思われます。きっと、大半の方は「年金数理人」という言葉を聞いた際、「年金を数理する人って、一体どんな人なの?」といった疑問を抱かれることでしょう。このページを通して、一人でも多くの方に「年金数理人」の理解を深めて頂ければ幸いです。

1. 年金数理人の役割

日本の多くの企業では、公的年金とともに従業員の退職後の生活(=収入)を保護するために、企業年金制度を設けています。企業年金制度は、長期にわたり運営されるものであり、確定給付企業年金法などの法令では、退職者の年金(又は一時金)の原資を従業員の在職中に計画的に積み立てていくことにより企業年金制度が健全に運営されるように規定されています。これは、加入者・退職者の権利が確実に保護されることを目指しているものと考えられます。このことを達成するために、年金制度に関する法令要件や数理的専門知識に精通し、適切な確認やアドバイスを行う役割を持つ専門家が必要とされ、年金数理人という資格が設けられています。

2. 年金数理人の業務

年金数理人の本来の業務は、厚生年金基金・国民年金基金および確定給付企業年金から厚生労働大臣へ提出される「年金数理に関する書類」の適切性(=適正な年金数理に基づいて作成されていること)を確認することです。この確認とともに、継続的に財政状況をチェックし、財政運営のアドバイスを行っています。

このように、年金数理人の当初の業務内容は、いわゆる「年金制度の水先案内人」・「年金制度のホームドクター」といった比較的限定的なものでしたが、その後の社会・経済環境の変化に伴い、年金数理人の業務内容も多様化しています。

具体的には、2000年4月から導入された「退職給付会計基準」における退職給付債務等の評価・確認に関する業務や退職金・企業年金・人事制度の設計を中心としたコンサルティング業務、年金制度の債務及び資産運用のリスクを総合的に管理する業務(年金ALM、LDI)など、数理的専門能力が必要な業務へのニーズの拡大に伴い、年金数理人の業務範囲も拡大しています。

年金数理人の業務範囲の拡大

3. 年金数理人の活動範囲

上記のとおり年金数理人の業務範囲が拡大してきたことに伴い、年金数理人が所属する法人は、当初は信託銀行、生命保険会社が多かったのですが、その後、損害保険会社、銀行、証券会社、コンサルティング会社、シンクタンクや監査法人などにも広がっています。このように、金融業界の枠を超えて、年金数理人が活躍するフィールドが拡大していることは、年金数理人が有する確率・統計学を中心とした数理的専門能力に対する社会の需要が高まってきている証ともいえます。

4. 近年の変化

今後、日本ではさらなる少子・高齢化が見込まれており、公的年金とともに老後の所得保障機能を持つ企業年金の役割はますます高まるものと考えられます。2017年1月には確定給付企業年金制度において、リスク対応掛金やリスク分担型企業年金の導入が可能になりました。確定拠出年金制度では拠出限度額において他制度掛金相当額等を反映する改正が2024年12月に施行されることとなり、確定給付企業年金制度においても他制度掛金相当額を適切に算出することが求められます。また、経済のグローバル化の進展を背景に、2009年に、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用が開始され、その適用企業は順次増加しているところです。

かかる状況下、年金制度の専門家である年金数理人は「年金制度の水先案内人」、「年金制度のホームドクター」という本来の役割を果たすのは勿論のこと、その数理的専門能力を最大限活用し、より幅広い分野で社会に貢献できる専門家になっていく必要があります。

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