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日本年金数理人会 2003年10月8日 |
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レスリー ローマン 氏
ご紹介ありがとうございます。今日このような機会をいただき、大変光栄に思います。発表の終わりに何なりとご質問いただければと思います。今後の日本の方向性を考える上で私のお話が少しでもお役に立てばと思います。 欧米ではジョークから始めますので、私もジョークから始めたいと思います。2人のアクチュアリーが歩いておりまして、1人がもう1人に「世の中はなぜこんなに問題ばかり多いのだろう。」と尋ねました。答えは「予想どおりになるよ。(Go figure)」で、問題は数字だよという内容に引っ掛けたものです。 | ![]() |
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米国と日本の文化的相違
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| これはどうでしょう。この式(3+5=?)で表わされる季節はいつでしょう。 |
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有名な季節はいつだ
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| 日本語に、そしてひらがなにします。「さんたすごいくつ」 |
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クリスマス
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| 一部をカタカナにします。そして、米国人向けにスペースを入れます。「サンタ すごい クツ」、答えはもちろんクリスマスです。 |
| ただ、この言葉遊びは欧米ではわからないし、わかってもあまり受けません。日本人は話の始めにジョークを持ってくることはないでしょうが、このような言葉遊びをおもしろいと言っていただけます。 |
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文化
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| 文化は説明する必要がないと思っていることのすべての根幹のところにあります。文化は効率性の源であると同時に、ほかのものを見えなくしてしまうものでもあります。 |
| 名前のつけ方も文化と密接な関係があります。私たちは自分の子供に名前を付けるときは慎重に考えますが、文化の中のいろいろな要素に名前を付けるときは、そのときの情況に左右されます。たとえば日本で退職時に払われる一時金制度を「離職手当制度(Serverance plan)」と呼んでいたら、FAS(財務会計基準書)第87号による監視を免れたかもしれないと思います。しかし、「退職給付制度(retirement plan)」と呼んだために自動的にFAS87が適用されてしまったというわけです。 |
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レス・ローマン
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| すでにお目にかかった方は多いと思いますが、初めての方のために私のことを申し上げますと、持っている肩書きは、カナダアクチュアリー会正会員、米国アクチュアリー会正会員、アクチュアリー協議会正会員、米国アクチュアリー・アカデミー会員、登録アクチュアリーと、たくさん資格試験を受けさせていただきました。 |
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レス・ローマン
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| 私は13年以上日本で仕事をしてきましたが、私は日本のアクチュアリーではありません。私は日本で退職給付会計に関するコンサルティングをしてきましたが、私は言葉の専門家ではありませんので、日本語を話したり、読んだり、書いたりすることができません。いろいろな方から日本語をなんとかしろと言われています。しかし、私もこれまで30年を超すアクチュアリー人生を歩み、その中で米国やカナダや日本でアクチュアリーやコンサルティングの仕事をしてきました。その経験から国と国との間の違い、あるいは類似性について考えるようになりました。 |
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科学的方法
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| 私は学生時代に科学を勉強し、科学的な手法には価値があると考えています。私は常に、観察し、推測し、そして推測を基に立証するという方法を採ります。私の推測が間違っていることもよくあります。顧客や同僚の中には私にイライラする方もあると思います。 |
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推測
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| 一方、他人の話の弱点を見つけることも大事だと思います。私の大学院の統計学科の先生は、喫煙は体に害でないというたばこ会社の主張の誤りを見つけることを教えてくれました。1974年頃からERISA法が私の重要な仕事にになってきましたが、喫煙と同様ERISA法も、本来ならば生活がよくなるべき人に、かえって負担を与えています。 |
| そのような経験もあり、私は最初から2000年問題を信じておりませんでした。また人口構成の危機的な推移が先進国の退職給付制度に影響を及ぼすのではないかという声が聞かれますが、私はそうは思いません。人間は危機を乗り越える力を自ら有していると、信じています。 |
| 私はこのような考え方をしますので、日本の退職給付制度は、最近になって変更されるようになる前からすばらしいと言って憚りませんでした。日本のシステムは世界で最も良いシステムだと、私はこれまでにも何回か公の場で話しています。 |
| しかし、日本の経済にはそれほど感心しておりません。経済によってさまざまな問題が発生していますが、そのような問題は設計を変えるだけで解決できるとは思っていないということです。 |
| 今日お話しをさせていただくことは、私がこの目で観察し、推測し、そして分析した結果ですから、これはあくまでも私見です。これは正しいこともあり、間違っていることもあるかもしれません。ぜひ皆さんに私の誤りを指摘していただき、それを正しい解決策につなげていただきたいと思います。私は、日本はいま分岐点に立っていると思います。自ら主導権を取り、置かれた状況を改善していくのか、あるいは他人の意見に従う追従的な道を歩むのかという分岐点です。 |
| また、今日のお話は、私の人生哲学にも通ずるもので、私は文化的な好き嫌いも含めてすべての物事には理由があると考えています。私はコンサルタントですから、顧客にいろいろな説明をしますが、そのときにはいつも理由をしっかりと説明するように心がけています。なぜなら、まず理解することが初めの一歩だと思うからです。 |
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前提
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| 私の話の基本的な前提は、日本と米国は違うということです。日本も米国もそれぞれ良い面もあれば悪い面もあり、お互いが良い面、悪い面の双方を学び合うことによって、より改善ができるものと考えています。 |
| 少し前に、米国アクチュアリー会が日本で主催をしたセミナーに出席しました。保険の話でしたので、皆さんは出席されなかったかもしれません。米国アクチュアリー会がいろいろな国でセミナーを行い、最後に日本でも開催しました。このセミナーで、米国人の講演者の1人が、日本の聴衆に自分のパスポートを見せました。かなり新しいものですが、いろいろなスタンプが押してあります。 |
| 日本人は英語を話すことも、読むことも、書くこともできるのであれば、このパスポートを見れば感心してくれるのではないか、これだけ飛び歩いているところを見せれば、自分の話に敬意を払ってくれるのではないかと、この講演者は思ったようです。これは米国人特有の傲慢さだと思います。 |
| 長く日本に住んでいますと、日本人にも特有の傲慢さを感じることがありますが、日本人はあのようなことはしないだろうと思います。特に国際会議の時の日本人の謙虚さは見習わなければならないと思います。日本人は他人の良い面を見出すことが得意で、日本人の人の話を聞いて相手の良い面を学ぼうとする能力には、ほんとうに頭が下がります。 |
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インターネットで見つけた文化の定義
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| 「文化とは社会において伝達される行動様式、芸術、信念、制度、その他人間の作業や思索の産物すべて」という定義がインターネットに出ていました。かなり普遍的定義です。世界共通の文化というものもありますが、これから申し上げる定義のほうがふさわしいと思います。 |
| それは、「ある集団あるいは組織の機能、働きを特徴づける顕著な態度や行動」です。ある集団とは、この場合は国です。 |
| 米国とカナダは共通するところありますが、カナダには米国とは違った文化があることを、ぜひ知っていただきたいと思います。私は米国といっても、トロントから60Kmしか離れていないところで育ちましたが、米国とカナダの違いの大きさにはびっくりしました。トロントの友人には私の米語がわからないということがしばしばありました。これは、フランス系住人がオンタリオとかケベックの境の西側に移動してくる前のことです。 |
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採用
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| 私がここで申し上げたいことは、一つの文化が別の文化を取り入れるとき、結果はめったに予想どおりにはならないということです。日本も米国からいろいろなものを取り入れましたが、取り入れたあとには元の米国のものはほとんど残っていません。洋服などもそうです。 |
| 米国の企業の人は、日本の人に会うと、日本人もスーツを着てネクタイをしているから、米国人とまったく同じに違いないと思ってかかります。もちろん米国人は、日本人がたとえ浴衣で現れても、米国人と同じに違いないと思います。つまり世界には、米国とは違うシステムで成功している国があるとは思いもよらないわけです。 |
| もう一つの事例を申し上げますと、米国の隣のメキシコでは個人の不動産の所有が認められていません。しかし米国人は、私的所有は普遍的だと信じて疑いません。少し離れたところでこれです。太平洋を挟んだ反対側に対する誤解たるや、かなり興味深いものといえるでしょう。 |
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いくつかの事例
(C)Lohmann International Associates 2003 12
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| 文化は「性差別、民族差別などを意識した言葉使い(politically correct*)」よりも厄介です。文化に関することは疑問をもつ必要がなかったり、疑問を持つことが許されなかったりすることがたびたびあります。たとえば外国人のお客が靴を履いたまま家に上がってきたり、トイレのスリッパを履いたまま出てきてきたとき、あるいは外国人のお客が最初に家のお風呂に入ったあとの心配を想像してみてください。 |
| 私は日本に長くいるので日本人が思うことはよくわかります。 |
| ( * 例 policeman を police officer , chairman を chair , chair person などと言い換える言葉使い ) |
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インターネットで見つけた「退職プランの定義」
(C)Lohmann International Associates 2003 13
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| 退職給付制度は米国からやってきて、いまや日本も共有する文化的な事象ですが、退職給付制度は、加入者全員が一度に退職したときの給付よりも資産が少ない場合に、積立不足となります。 |
| インターネットの信頼できる辞書を見ると、退職給付制度を次のように定義しています。「退職後に使うお金を貯めておく制度 同義語:年金プラン、退職プログラム」。この辞書には、「退職スキーム」という言葉をはありませんでした。米国の辞書だったからでしょう。 |
| この定義では貯蓄が強調されていることにご注目ください。退職給付制度は退職時または退職したあとの期間に給付を支払う制度であるという圧倒的な証拠がありますが、この定義は退職する前の貯蓄の部分に焦点を当てています。 |
| 議論の前に私の定義を申し上げますと、「退職時または退職後に支払われる計画的給付」です。私は常々退職給付制度の目的は、給付事由が確定したときに給付を行うのがその目的であって、その前でも後でもないと思っています。 |
| インターネットの定義に米国文化の影響を見ることができますでしょうか。synは同義語の略号ですから、退職プログラムは年金プランと同じということになります。 |
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インターネットで見つけた「年金プラン」の定義
(C)Lohmann International Associates 2003 14
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| 一括払いの制度は「年金制度」ではないと考えるべきです。年金だけれども一括払いの額を基に年金の計算をしている制度はどうでしょうか。これも年金制度ではないと思います。これらは退職給付制度だと思います。 |
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なぜ貯蓄制度なのか
(C)Lohmann International Associates 2003 15
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| 米国の辞書ではなぜ貯蓄を強調しているのでしょうか。話は60年代後半、70年代前半に遡ります。当時の保険商品は、今ほど洗練されておりませんでしたが、有利な法律があったこともあって、税制上非常に優遇されておりました。 |
| 高所得者層に魅力的な保険の特徴の一つは、解約返戻金を非課税で積み立てることができたことです。米国では、年金は保険商品の一つで、特に据置年金は解約または年金化までは非課税で積み立てができました。高インフレにより据置年金の販売に力点が置かれましたが、当時年金として考える顧客はまったくいなかったようです。 |
| 当時から米国には理論として年金という考え方はありましたが、注目を集めていたのは据置年金です。据置年金は一時金支払いができました。私の知る限り、保険会社の顧客の中に保険料一時払据置年金を購入しても、それをを保証付年金に転換する人はいなかったと思います。その後税制上の優遇措置を減らす法律が成立しましたが、この商品は常に年金と呼ばれてきました。米国のビジネス英語では、年金(annuity)という言葉は定期的支払とは少し意味が異なっています。 |
| 最近、投資信託業界と証券業界が「貯蓄と退職」分野に進出しています。退職後の給付がないにもかかわらず投資信託会社や証券会社は商品に「退職給付制度」という名前を付けておおいに盛り上がっています。投資信託業界や証券業界は、退職給付制度の法律制定に影響力があり、多額の政治献金を背景に、「退職給付制度」は完全積立であるべきだという主張を政治家の中に浸透させています。 |
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退職手当制度
(C)Lohmann International Associates 2003 16
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| 日本の退職給付制度は戦後の工業化の中で「退職手当制度」として始まりました。つまり一括払いのみです。日本の場合、貯蓄とは関係がなく、貯蓄以前に消費するお金を提供するということが日本の経済に好都合だったのです。退職一時金は普通、勤続年数と退職時の基本給、退職事由(自己都合か会社都合か)に基づいて計算されました。 |
| これは当時の日本企業のニーズを反映しており、退職一時金制度がある企業では終身雇用が当たり前でした。定年前に辞める人はまれで、辞める場合にはそれなりの理由があることが普通でした。懲戒免職でない会社都合の退職では、満額の受給ができました。 |
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その後の発展
(C)Lohmann International Associates 2003 17
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| その後日本はますます豊かな国になり、企業は従業員が退職するときの資金の心配をするようになったため、保険会社と信託銀行が資金を管理する商品(基本的に固定保険料で外部積立をする仕組み)を販売し始めました。このような資本の使い方が適切かどうかは別にして、従業員の退職金の調達を心配しなくて済み、一般の従業員もこれにより保証が高まるというメリットがありました。しかし、この商品の税と管理費はかなり高いものだったといえます。 |
| しかしこうした商品の導入理由である資金の管理は、若干問題がありました。典型的な契約にはいまでも保証がありません。90年代までは現実的な割引率と保守的な計算基礎率を適用して保険料を算定していましたから問題はありませんでした。90年代初めの頃は、私の知る限り制度終了時の給付水準からみて過剰積立だったと思います。 |
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日本の強み
(C)Lohmann International Associates 2003 18
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| 日本の退職給付制度は一時金額から計算され、年金は通常有期年金ですから、性別がまったく計算の根拠になっていません。基本給が同じであれば、退職金の金額も同じだということです。米国の制度はそうではありません。 |
| 日本はさらに、終身雇用と従業員重視の経営という別の文化的恩恵を受けてきました。自己都合でも会社都合でも、定年前に辞めることはまれでした。給付額は給与と勤続年数で決まり、退職事由によって減額される場合があります。自己都合の場合には、半分くらいの金額になりますが、懲戒解雇には非常に厳しく、無給付となる制度が多数あります。給付は一時金額として計算されますので、早期受給による割引はありませんが、従業員重視の経営の下ではこのようなあまり発生しないコストを気にする必要はなかったのです。 |
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米国の弱み
(C)Lohmann International Associates 2003 19
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| 一方、米国の経営者は企業経営がすべてです。米国企業は、最低限の仕事のために最低限の賃金を払いますが、あまり一般従業員のことを気にしません。企業の方針や規則はいつでも従業員の同意や通知なしに変更され、過去に遡及して適用されることもあります。 |
| 私はよく驚くのですが、外資系企業の日本人経営幹部は、何か特別な手当をもらおうとする場合、一般の従業員にも同じ手当が認めてもらえるよう努力します。これは米国では考えられません。米国企業のトップは、自分が特別な手当や付加給付をもらっても、一般従業員にまで広げようとはしません。最近米国ではいろいろな不祥事が発覚し、企業のトップが企業にもたらした付加価値以上の報酬を受け取っていることが暴かれています。これはどういうことなのかと考えてしまいますが、おそらく本人たちはあまり考えておらず、自動的にもらえるのだと思っています。これもやはり文化と言えると思います。 |
| 私はよく驚くのですが、外資系企業の日本人経営幹部は、何か特別な手当をもらおうとする場合、一般の従業員にも同じ手当が認めてもらえるよう努力します。これは米国では考えられません。米国企業のトップは、自分が特別な手当や付加給付をもらっても、一般従業員にまで広げようとはしません。最近米国ではいろいろな不祥事が発覚し、企業のトップが企業にもたらした付加価値以上の報酬を受け取っていることが暴かれています。これはどういうことなのかと考えてしまいますが、おそらく本人たちはあまり考えておらず、自動的にもらえるのだと思っています。これもやはり文化と言えると思います。 |
| 米国の経営幹部は、自らの第1の主要な制度に確定拠出をとりいれません。常に確定給付を第1とし、第2に損失のリスクがなく、現金が貯まる制度(確定拠出のような名前で、実は確定給付の制度)とする傾向があります。損失のリスクや、早い段階での課税から身を守るためにできるだけ事前積立となる制度を採る傾向があります。 |
| 一方、日本では経営幹部の制度に引き続き確定給付を採用していますが、役員に対する税金の問題があるためで、一般従業員と同じ制度にしたいということではなさそうです。文化として、米国の役員は、多額の報酬をもらって会社を辞めて別の会社に移ることができることがわかっているため、自分のためには一般従業員を犠牲にしてもいいと思う傾向がはるかに強いのではないかと思います。 |
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理由
(C)Lohmann International Associates 2003 20
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| 米国の退職給付制度にはどうしてさまざまな問題があるのでしょうか。性差別、年齢差別、低水準の定年前の退職給付などがあります。また、従業員は給付水準や制度終了時の権利を交渉することができないこと等いろいろな問題があります。やはりこれは文化なのではないかと思います。 |
| なぜ米国人は自ら問題を解決しようとしないのでしょうか。これも文化でしょう。米国人には自分たちの制度と異なる制度が考えることができません。米国は日本の退職給付制度に大きな影響を及ぼしましたが、米国人は日本の制度を想像することすらできないのです。 |
| 米国以外ではFAS87がこれほども使いづらいのかという問題もあります。もちろんそれも文化が違うからだと思います。米国の退職給付制度と異なる制度を米国人は理解できないというわけです。 |
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いくつかの歴史
(C)Lohmann International Associates 2003 21
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| もともと米国では、退職時に何らかの支払いを行う会社は退職時点のみでしたし、給付といえば、現役時の給与を減額して払い続ける形を採っていました。日本では元役員を顧問にして毎月顧問料を払っていますが、米国にも似たようなシステムがありました。 |
| 税制上これらの経費は必要経費とみなされて会社は控除を受けられ、受け取った元従業員には税が課されます。税制上はこれが給与とみなされているということです。一括で支払われる例は少なく、給与とよく似ているので、当局もこれを保険や年金とは考えませんでした。 |
| 退職給付制度がより組織化されるにつれて、企業の年金給付は通常退職年齢まで働いた従業員だけに支払われるようになりました。通常退職年齢の前に退職した場合には、給付がないということです。 |
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いくつかの歴史
(C)Lohmann International Associates 2003 22
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| 技術的な話が好きな方は、ここに出ている式を見てください。r歳までは給付がありません。退職前のDには死亡、障害、離職による減少が含まれています。 |
| しかし、通常退職年齢以前の退職の場合にも給付がほしいという従業員側からの要請が高まりました。企業としては追加コストなしに対応したいということで、アクチュアリーに相談がありました。アクチュアリーが提案したのは、退職時点で給与や勤続年数を基に年金を計算し、通常退職年齢以降にそれを支払うという方法です。つまり据置年金です。そのようなやり方をとると、この式に示されるDX分のNrは変えなくて済むことになります。しかしながらコストは上昇してしまいます。なぜなら離職とか障害による減少が、退職前のDから落ちてしまうからです。 |
| 日本は状況が違います。日本ではいつ退職しても退職給付がもらえます。日本の場合は、係数のciは勤続年数と給与によって決まる金額になります。 |
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いくつかの理由
(C)Lohmann International Associates 2003 23
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| 米国にはもう一つ重要な問題がありました。何年も働いて通常退職年齢前に退職した場合に何ももらえないのは公平ではないのではないかと、人々が感じるようになり、通常退職年齢で支払われる給付の一部は退職するまでの勤務による部分ではないのかという疑問を、従業員の側が持つようになったのです。すでに保険の分野では最低の解約返戻金の払戻しが強制されていました。つまり将来の給付に応分の積み立てをしているではないかという考えが、米国の従業員の間で広がっていきました。 |
| 受給権の付与はこのような考えかたから出てきたものです。一定の期間勤務したら、将来の給付の相応部分をもらう権利があるという考え方です。Dの中の離職による減少部分が小さくなり、退職給付のコストが上がりました。アクチュアリーは公正にそして文化的な傾向を考慮しながら受給権付与済み給付の計算方法をいくつか開発しました。しかし見た目は公正な計算方法でも、少なくともそのうちの一つの計算方法はERISA法に抵触しました。それは二重割当(double pro-ration)方式です。しかしここで重要な概念は、将来の給付に対する相応の積立部分を認めるという考え方です。つまり退職給付の解約返戻金(cash surrender value)ということです。退職給付は退職する従業員の退職時のニーズを反映したものになっておらず、通常退職年齢における「発生給付」の解約返戻金にしか過ぎません。 |
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エリサの選択
(C)Lohmann International Associates 2003 24
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| 企業はコストが下がって利益が出ました。通常退職年齢における据置給付は発生給付と呼ばれ、この金額は発生給付の現価と呼ばれました。ERISA法ではこれを退職する従業員に企業が支払う最低金額と規定しています。残念なことに生命保険の解約返戻金と異なり、ERISA法ではそれ以前からあった雇用主のコストの考え方を流用して、金額は割引率によって異なるべきであるという規定になっています。 |
| したがって、低金利時代に退職すると、高金利のときよりも受取金額が大きくなることを意味していました。ちょっとしたタイミングのずれで金額は大きく変動しうるということです。 |
| 文化ゆえに米国ではだれもこのアプローチに問題を感じませんでした。会社は退職手当ではなく、老齢給付を約束していたので、変動金利の使用も妥当だと思われました。これで従業員は将来給付に対して応分の持ち分を受給できることにになりました。 |
| 米国には一時払の給付に対して別の法律があり、従業員は一時金額に対する既得権益を持っているにもかかわらず、従業員の側からは外部積立の要求は出てきません。ERISA法は金額が一定の水準を下回っていれば積立方式の例外を認めています。最終給与の24カ月分だったと思いますが、米国人はこれらを恩恵と受け止めており、問題を感じる人はほとんどいないというわけです。 |
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従業員の認識
(C)Lohmann International Associates 2003 25
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| 退職給付制度から退職手当(termination benefits)を支払うという法律をなぜ米国人は受け入れたのでしょうか。これも文化だといわせていただきたい。米国人は退職給付制度を老齢年金制度だと考えており、退職手当を支払う制度とは思っていません。退職手当は単に解約返戻金であって、退職給付の内部積立金相当額だという考えです。政府は長年にわたって生保の解約返戻金を規制してきましたが、これも同じです。老齢年金の解約返戻金を規制するという考え方です。 |
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「はっきり決められる」とはどういうことか?
(C)Lohmann International Associates 2003 26
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| ERISA法には明確に決定できる給付という要件がありますが、これは自己矛盾だと私は思います。なぜならば日本の制度のようにどの時点でも、自分が退職した場合にどれぐらいの金額がもらえるのかということを、事前に予測できる制度は、米国では違法だからです。 |
| なぜ米国人は確定給付よりも401(k)のような確定拠出のリスクを好んだのでしょうか。どちらの価値がより大きいのかわからないのかも知れませんが、確定拠出制度を自らコントロールできる本当の意味での退職給付制度と見ているふしがあります。確定拠出制度はもともと確定給付制度と同じような給付行うことを意図していません。老齢退職給付は確定給付よりも確定拠出のほうが低く、逆に早期退職給付は確定給付より確定拠出が多くなっています。 |
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日本のゴール
(C)Lohmann International Associates 2003 27
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| これは日本にとって教訓となると私は思います。米国人が自分たちのシステムについて見落としていることから日本は学ぶべきだと考えます。 |
| まず第一に、一時金だけを基に給付を計算して、終身年金という考え方を採らないようにすれば、企業は性差の問題を回避できます。そしてこれは保険会社や信託銀行のビジネスにも終身年金の販売という形でつながります。 |
| 2番目に、日本は発生給付という考え方を避けるべきです。退職時に従業員に支払う給付は企業のニーズに合うように設計されるべきです。日本の設計のS字型の増加曲線は、私は理想的であると思います。 |
| 3点目、日本は退職給付がだれの約束なのか、給付をもたらす勤務はいつの勤務なのかをしっかり認識する必要があると思います。企業が倒産したときには退職給付を優先すべきだと私は考えています。 |
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エリサ ? 給付を保証か ? 否
(C)Lohmann International Associates 2003 28
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| もう一つ面白い現象があります。ERISAは米国の退職給付制度の給付を保証するために制定されました。日本の税制を見ますと、日本では翌年の3月15日に申告をします。延長は認められません。一方、米国では、申告期限は一応4月15日ですが、だれでも4カ月間延長できます。つまり8月15日まで申告を延ばせます。これには理由はいりません。加えて、さらに8月15日以降も簡単に申告を延ばせます。これは個人の場合で、企業の場合にはもっと時間的な猶予があります。 |
| 米国の年金法は税法から始まっています。年金に関する報告は年度終了後9カ月遅れてされ、さらに延長もあるため、評価日から少なくとも21カ月たたないとその時点での制度の状況がわからないことになります。ですから米国の制度がマーケットの暴落でいかに影響を被ったかがわかるまでに2年以上かかりました。 |
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エリサの全てが悪ではない
(C)Lohmann International Associates 2003 29
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| 最後になりますが、私はERISA法を高く評価しているわけではありません。しかし世界中でリセッションが起こっている中で、ERISA法はよい影響をもたらしました。ERISA法は、好景気のときに退職給付制度が行き過ぎた投資をすることを防ぎます。 |
| 企業が退職給付制度の資金を使ってもっと運用してしまっていたら、90年代のバブルはもっと深刻なものだったでしょう。投資信託業界や証券業界が確定給付制度に反対しているのは、それが一つの理由かもしれません。 |
| 逆にリセッションのときにはERISA法は退職給付制度に投資を強制します。企業が21カ月待つのではなく、数週間で積立不足の解消に着手していたならば、米国の景気はもっと急速に回復できたでしょう。 |
| たとえば日本政府が1991年に厚生年金基金や適格退職年金に対して割引率の引き下げを求め、そして掛金率の引き上げを求めていたならば、マーケットに資金が流入し、株価は上昇したでしょう。そして今はマーケットが少し回復してきているようですから、それらの割安株は制度の積立状況を改善してくれたはずです。株価下支えを試みるよりもよほど景気を支えられただろうと思います。 |
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ご清聴ありがとうございました。(拍手) |