企業会計基準委員会「厚生年金基金に係る交付金の会計処理に関する当面の取扱い(案)」に関する意見

平成18年4月26日

財団法人 財務会計基準機構
企業会計基準委員会 御中

「実務対応報告公開草案第21号『厚生年金基金に係る交付金の会計処理に関する当面の取扱い(案)』」に関する意見

社団法人 日本年金数理人会

日本年金数理人会は、退職給付会計における厚生年金基金の代行部分の取り扱いに関し、年金制度の財政運営の観点から意見を述べてきました。
「厚生年金基金に係る交付金の会計処理に関する当面の取扱い(案)」に関しても下記のとおり意見を提出させていただきます。貴委員会でのご議論でお役立ていただければ幸甚です。

1.厚生年金基金制度に対する退職給付会計基準の見直しの必要性

今回の公開草案は、厚生年金基金に関する交付金の会計処理を検討するにあたって、厚生年金基金制度に対する退職給付会計基準の適用を見直すべきではないかという意見がある一方で、これらの意見については、なお検討を要するとして、現行の退職給付会計基準に則して当面必要と考えられる交付金の実務上の取扱いを示すものとなっています。

しかしながら、この交付金は厚生年金基金の代行部分に関する一連の改正の一環として設けられたものであり、交付金のみを取り上げた今回の草案は、厚生年金保険法の改正を反映したとするには、不十分なものといわざるをえません。

公開草案の中でも、今回の厚生年金保険法の改正に関して、「厚生年金基金の財政上、厚生年金基金が負う債務は、上乗せ部分については数理債務、代行部分については最低責任準備金となることが明らかになった」ことについての認識が示されていますが、これは単に年金財政上の事象と考えるに留まらず、企業会計においても厚生年金基金の代行部分の費用および債務の基本的な前提を変更する改正であるととらえる必要があり、まず、代行部分に係る退職給付会計基準の適用の見直しを行うことが急務であると考えます。

2.厚生年金基金の代行部分の取扱い

退職給付会計基準意見書では、厚生年金基金制度について1つの退職給付制度とみなして、財政計算上の計算方法にかかわらず同一の会計処理を適用するものとされています。しかしながら、今回の法改正により、厚生年金基金の代行部分と上乗せ部分とでは債務の性格が明らかに異なるものとなっており、当時の意見書が想定していなかった基本的な前提に変更があったと考える必要があります。

また、厚生年金基金の代行部分は、免除保険料と政府負担金に加え給付現価交付金の拠出のみでまかなわれ、最低責任準備金を超える積立てを必要としません。これは、代行部分に関しては厚生年金基金を設立している事業主に実質的に財源調達の義務がないことを意味します。

このことから、厚生年金基金に退職給付会計基準の適用するにあたっては、代行部分と上乗せ部分を異なる制度と認識し、代行部分を退職給付会計の対象外とする、または退職給付会計の対象とするのであれば最低責任準備金を代行部分の債務とする必要があると考えます。

なお、代行部分を退職給付会計の対象外とする場合には、厚生年金基金を設立する事業主の交付金の会計処理は不要となります。

以上

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